人生にこれといった悩みがないとき、私はパタっと小説を読む手が止まる。
秋の夜長、読書にはもってこいの時期だというのに。
2020年代になってさらに拍車がかかるように、エンターテイメントが現代人の数少ない可処分時間の奪い合いを繰り広げている。
YouTube、TikTok、Netflix、Instagram…
あらゆるエンタメの誘惑がある中で「小説」に軍杯が上がるとすれば、あなたはとても幸せな時間を生きているに違いないとさえ思う。
羨ましさ満点に書いたところを見ると、私は少々小説に縁遠くなっているということだ。
それがだ、
ふと「悩み」とも言えぬ、人様からするとどうでもいい取るに足りない事柄が頭の中を占拠しようものならば、忙しい合間を縫ってでも「小説」に手を伸ばしたくなる。
なぜって…?
この場合、あの主人公ならどう考えるだろう。
私の想いを代弁してくれはしないだろうか。
私が見落としている視点を俯瞰的に、間接的に伝えてくれないだろうか。
そんな風にあわよくば答えを貪るように、また悩みの最適解を見つけるかのように、手を伸ばすした先に、心に留めておきたくなる一節が見つかるからだ。
事実は小説より奇なりとはよくいったものだが、バラバラになったジグソーパズルを埋め合わせるように、小説のとある一節たちが支えてくれている今生のストーリーというのも悪くない。